塗装の上から塗装はできる?失敗しない下地処理と素材別手順

塗装の上から塗装はできる?失敗しない下地処理と素材別手順

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塗装の上から塗装はできますが、旧塗膜の状態と塗料の組み合わせを確かめないと、シワや剥がれが起きます。塗料メーカーの公式Q&Aと製品資料をもとに、素材ごとの下地処理を整理します。

悩見有造
悩見有造

塗装の上からそのまま塗っても大丈夫ですか?失敗しないためには、どんな下地処理が必要ですか?

編集長
編集長

上塗りできるかは、下の塗膜がしっかりしているかと、上に塗る塗料の溶剤の強さで決まります。家庭用塗料メーカーのアサヒペンも、油性塗料の上にラッカースプレーを吹くとシワになりめくれることがあると案内しているので、まず組み合わせから確認しましょう。

📌 この記事でわかること

● 上から塗ってよい旧塗膜・塗ってはいけない旧塗膜の見分け方

● スプレーのシワ・白化・泡が起きる原因

● プライマーと密着剤ミッチャクロンを使う場面

● サビの上から塗るときの手順

● 車・バイク・木材・金属で変わる下地処理

塗装の上から塗装は可能?基礎知識と注意点を整理

塗装の上から塗装は可能?基礎知識と注意点を整理

編集長
編集長

最初に、上塗りできる下地かどうかと、塗料の組み合わせで起きる失敗を確認します。ここを外すと、どんな塗料でも剥がれやすくなります。

この章のQ&Aは、アサヒペン公式サイトの「よくあるご質問」と、密着剤メーカーの製品資料によるものです。

塗装の上に塗装する前に知っておきたい基本

上から塗れるのは、旧塗膜に浮き・割れ・粉吹きがなく、下地にしっかり付いているときです。新しい塗料は旧塗膜に付くので、旧塗膜が弱ければ一緒に剥がれます。

アサヒペンは鉄製品の塗り替え時期の目安として、ツヤがなくなり色あせが目立つ、塗料がはがれかかっている、表面が粉っぽく触ると粉がつく、サビが出ている、の4つを挙げています。状態ごとの対応は次のとおりです。

旧塗膜の状態 上から塗れるか やること
ツヤが残り、浮きや割れがない塗れる汚れと油分を落とし、研磨してから塗る
触ると粉がつくそのままは不可粉を落とす。劣化が激しい下地はシーラーを下塗り
はがれかかっているそのままは不可皮スキ・ワイヤーブラシ・サンドペーパーで取り除く
前に塗った塗料の種類が分からない試してから目立たない場所に少量塗り、シワや浮きが出ないか見る

シーラーは、吸い込みが大きい下地や劣化した下地に塗る下塗り塗料です(アサヒペンのQ&A)。

スプレーで起きやすい失敗とは?

スプレーで起きやすいのは、旧塗膜のシワ・めくれ、白くなる、泡の3種類です。アサヒペンのQ&Aに書かれている原因は次のとおりです。

症状 原因(アサヒペンのQ&A) 対策
旧塗膜がシワになりめくれるラッカースプレーの溶剤で旧塗膜が侵される油性塗料の上にラッカースプレーを吹かない
重ね塗りしたらシワになり浮いた1回目の塗膜の乾燥が不充分(アサヒペンのQ&Aでは床用ニスの事例)1回目を充分に乾かしてから重ねる
ツヤが出ず白くなる湿度が高いときの塗装で水分が入り込む(ブラッシング)湿度の低い日に同じ塗料を重ね塗りする
泡が出る近づきすぎ、缶を動かす速度が遅い・止まる距離を保ち、一定の速さで動かす

スプレー缶は火災の事故も起きています。NITE(製品評価技術基盤機構)によると、2013年度から2018年度(11月30日まで)に報告されたスプレー缶の火災・破裂事故は27件で、うち22件が火災でした。

⚠️ 注意

使用中・使用後は出入り口を開けて換気し、換気が終わるまでガスこんろ・換気扇・掃除機など火花が出る機器を使わない。

暖房器具の近くや直射日光が当たる場所など、高温になる場所にスプレー缶を置かない。

クリア塗装の上から塗装はできる?密着の考え方

クリア塗装の上にも塗れますが、表面がツルツルで、ワックスやコーティングが残っていると密着しないため、表面処理が欠かせません。

クリアの種類・状態 注意点
ワックス・撥水コーティングが残っている密着剤メーカーの資料では、シリコン系塗装・フッ素塗装・撥水剤コーティングは研磨などで除去するよう指示
床材のUV塗装・セラミック塗料などメンテナンスフリーの加工アサヒペンのQ&Aでは、床用のニスでも密着しないことがあるとしている
ツヤのある硬いクリアサンドペーパーでツヤを均一に消し、削った粉を拭き取ってから塗る

研磨に使うサンドペーパーの番手は塗料ごとに指定が違います。たとえば、アサヒペンは油性塗料の上に水性塗料を塗る場合に#240程度、カー用品ブランドのホルツは、ホイール用の「メタルクリア」を塗る前の下地づくりに1000番程度を案内しています。

プライマーは必要?使い分けの目安

プライマーは必要?使い分けの目安

プライマー(下塗り用の密着剤)が必要かは、塗る相手の素材と旧塗膜で決まります。アサヒペンのQ&Aで案内されている組み合わせは次のとおりです。

塗る面 下地処理(アサヒペンのQ&A)
油性塗料の上に水性塗料#240程度のサンドペーパーをかけてから塗る
アルミ・ステンレス「メタルプライマー」を下塗りすれば、水性・油性・スプレー塗料を塗れる
ポリプロピレン(PP)#600で研磨し、「プラスチック用プライマー」を下塗り
ポリエチレン(PE)プラスチック用プライマーでも良好な密着は得られず、おすすめできる塗料はない
鉄(サビを落とした部分)サビ止め塗料を下塗りする

同じQ&Aでは、メタルプライマーもすべての非鉄金属に対応しているわけではなく、容器表示を確認するよう書かれています。素材が分からない場合は、プライマーの容器に書かれた「塗れる面」と照らし合わせてください。

塗装の上にプライマーを塗るとどうなる?密着と段差の注意

プライマーを塗ると密着は上がりますが、厚く塗ると逆に密着不良や段差の原因になります。

密着剤メーカー・染めQテクノロジィの「ミッチャクロンマルチ」の製品資料では、塗布量の目安を乾燥膜厚6~10µmとし、スプレーガンなら15~20cmほど離して薄く1~2回塗るよう指示しています。くぼみに溜まった部分は密着不良の原因になるとも書かれています。

プライマーの後で やること
サビ止め塗料を下塗りした日光や雨に弱いので、必ず上塗りする(アサヒペンのQ&A)
部分補修で境目が盛り上がった乾燥後に軽く研磨して段差をならしてから上塗り
上塗りまでの時間プライマーの容器に書かれた時間を守る

ミッチャクロンは効く?向く場面・向かない場面

ミッチャクロンは、密着しにくい素材に上塗りするための下塗り剤です。ただし、汚れやサビを落とす工程は省けません。

「ミッチャクロンマルチ」の製品資料で確認できる仕様は次のとおりです。

項目 製品資料の記載
使える素材亜鉛メッキ・アルミ・ステンレスなどの金属、PPなどの樹脂、ガラス、クロムメッキ、焼付塗装面など
上塗りまでの乾燥上塗りが溶剤系なら20~30分程度、水系なら2時間程度(気温20℃・湿度60%の目安)
容量と塗れる面積420mlエアゾールで約2~2.5㎡
使う前の処理油分・汚れ・水分・ホコリを完全に除去する
使わない・注意する条件シリコンを含む素材には使わない。5℃以下の低温や湿度が極端に高いときは密着が得られないおそれ

製品資料では、ペーパー研ぎ不要の特長に「一部を除く」と注記があり、溶融亜鉛メッキ・電気亜鉛メッキの面は研磨しないよう指示があります。使う前に目立たない場所で試し塗りすることも、資料に書かれています。

錆びの上から塗料を塗っても大丈夫?再発を防ぐポイント

サビの上からそのまま塗るのは、サビの上に直接塗れると表示された塗料以外では避けます。サビは塗膜の下でも進むため、落としてから防錆の下塗りを入れるのが基本です。

アサヒペンの鉄製品の塗り方では、次の順で作業します。

工程 やること
① 汚れ落としゴミ・汚れ・カビを取って乾かし、油分やワックスはペイントうすめ液で拭き取る
② サビ・旧塗膜の除去はがれかかった塗膜やサビを皮スキ・ワイヤーブラシ・サンドペーパーで取り除く
③ 防錆の下塗りサビを落とした部分にサビ止め塗料を塗る
④ 上塗り目的に合った塗料をかき混ぜてから塗る

例外として、アサヒペンのQ&Aでは、同社の「油性高耐久鉄部用」はサビの上から直接塗れる塗料として紹介されています。サビの上に塗れるかは塗料ごとに違うので、缶の表示で確かめてから選んでください。

塗装の上からの塗装を成功させる!素材別の手順とコツ

塗装の上からの塗装を成功させる!素材別の手順とコツ

編集長
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ここからは素材別の手順です。車・バイク・木材・金属では、失敗の原因になる物(ワックス・熱・ヤニ・油分)が違います。

各メーカーが公開している乾燥時間や下地処理を、素材ごとにまとめます。

車で失敗しないための工程

車は、洗車・脱脂・研磨のあと、補修塗料メーカーの乾燥時間を守って薄く重ねるのが基本です。ボディにはワックスやコーティングが残りやすいため、脱脂を省くとはじきの原因になります。

工程 要点
洗車・乾燥泥と水分を残さない
脱脂ワックス・シリコンを脱脂剤で落とす
研磨塗る範囲よりやや広くツヤを消し、境目をぼかす
塗り重ね1回で色を乗せず、乾燥時間をとりながら薄く重ねる

乾燥時間の例として、自動車用ケミカルメーカーのソフト99は、補修スプレー「エアータッチ」の塗り重ねまでの目安を夏場約5分、冬場約10分としています。ホルツはホイール用塗料の乾燥を、表面乾燥2時間くらい、完全乾燥1週間くらいと案内しています。

商品によって数字が大きく違うので、使う塗料の表示を必ず確認してください。

バイクは何が違う?耐熱・耐候の注意点

バイクは、パーツごとに熱・ガソリン・紫外線の条件が違うため、場所ごとに塗料を選び分けます。

パーツ 条件 塗料の選び方
マフラー・エンジンまわり高温になる耐熱温度が表示された耐熱塗料を使う
燃料タンクガソリンが付くことがある容器表示で耐ガソリン性を確認する
樹脂のカウル素材によって密着しにくいPPなら研磨してプラスチック用プライマーを下塗り
屋外保管のパーツ紫外線を受ける屋外用の表示がある塗料を選ぶ

耐熱塗料の例として、潤滑剤やケミカル用品のメーカー・呉工業の「耐熱ペイントコート つや消しブラック」(製品番号1064・300ml)は、マフラーやエンジンまわり向けのシリコーン樹脂の耐熱塗料です。同社の製品ページでは、硬化後の耐熱温度は600℃とされています。

木材は剥がれやすい?木目と吸い込み対策

木材は剥がれやすい?木目と吸い込み対策

木材は、吸い込み・ヤニ・撥水性の旧塗装の3つで失敗しやすい素材です。アサヒペンのQ&Aにある対処は次のとおりです。

こんな場合 対処(アサヒペンのQ&A)
吸い込みが大きい・劣化しているシーラーを下塗りする
杉の節目からヤニが出るヤニ止めにラックニス(ヤニ止めに使う透明塗料)を全体に塗ってから上塗り(節目だけだと吸い込みムラ・色ムラが出やすい)
撥水効果の強いステインの上に重ねる時間とともに塗り重ねた塗料まではじくので、時間をあけすぎない
油性塗料の上に水性塗料#240程度のサンドペーパーをかけてから塗る

研磨したあとは、削った粉を乾いた布で拭き取ってから塗ります。粉が残ると、ザラつきや密着不良につながります。

金属塗装の上に塗装するなら要注意!サビ・油分・足付けのコツ

金属は、油分とサビを落としてから、素材に合った下塗りを入れるのが基本です。アサヒペンのアルミ・ステンレス製品の塗り方では、次の手順になっています。

● ゴミ・油分・さび・カビ・ワックスを取り、ペイントうすめ液で拭いて乾かす

● 白サビや青サビはサンドペーパー(#240)やワイヤーブラシで落とす

● はがれかかった古い塗料は皮スキやワイヤーブラシで取り、サンドペーパーで凹凸をなくす

● メタルプライマーを全体に塗って乾かしてから上塗り

亜鉛メッキの面は扱いが違います。ミッチャクロンマルチの資料では、亜鉛メッキの面は研磨しないよう指示があり、溶融亜鉛メッキでは上塗り後1週間は無理な力を加えないよう書かれています。

まとめ:塗装の上からの塗装で失敗しないための確認ポイント

塗装の上から塗装するときは、旧塗膜の状態と塗料の組み合わせを先に確かめることで、失敗の大半を防げます。

確認すること OKの目安
旧塗膜浮き・割れ・粉吹きがない
塗料の組み合わせ油性塗料の上にラッカースプレーを吹かない。不明なら試し塗り
表面処理脱脂し、ツヤを均一に消して粉を拭き取った
サビ落としてサビ止めを下塗りした(またはサビの上に塗れる表示の塗料を使う)
乾燥1回目を充分に乾かし、塗料の表示どおりの時間をとった

作業前にこの表で下地と塗料を確かめてから、目立たない場所で試し塗りを始めてください。

📚 参考文献・出典

・アサヒペン – よくあるご質問(塗料/各塗料の使い方)

・アサヒペン – よくあるご質問(塗装場所/素地との相性について)

※ 塗料の組み合わせ・下地処理に関する記述は、上記メーカーの公式Q&Aと各H3に記載した公式資料をもとにしています。