工具損料の相場はどれくらい?工事現場で迷わない基準と考え方を解説

工具損料の相場はどれくらい?工事現場で迷わない基準と考え方を解説

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工具損料に、全国共通の「◯%」という公的な率はありません。国土交通省の積算基準での扱いと、自社の率を計算して見積に載せる手順を整理しました。

悩見有造
悩見有造

工具損料って工具の購入費とは違うんですか?見積書に書いてあっても、何%にすればいいのか判断できなくて困っています。

編集長
編集長

購入費そのものではなく、工具の償却や修理の費用を工事ごとに割り振ったものが工具損料です。

公共工事の基準では、機械は1時間・1日あたりの損料、小さな器材は諸雑費や諸経費の中で見ます。民間の見積では、自社の年間工具費を労務費で割った率を根拠にしてください。

📌 この記事でわかること

● 工具損料と、国土交通省が定義する機械損料の違い

● 「何%が相場か」に公的な基準があるかどうか

● 運転1時間当たり損料・供用1日当たり損料の算定式

● 自社の工具損料率を計算する手順と、見積書での扱い方

工具損料の相場を正しく理解するための基礎知識と注意点

工具損料の相場を正しく理解するための基礎知識と注意点

編集長
編集長

「相場は何%」と覚える前に、公共工事の積算基準で損耗の費用がどこに入っているかを押さえると、見積の説明がぶれなくなります。

以下は、国土交通省が公開している積算基準と通達の記載をもとにしています。

工具損料とは何を指す?初心者でも分かる基本の意味

工具損料は、工具の償却・修理・保管にかかる費用を、工事ごとに割り振って計上する費用です。公的に定義が示されているのは建設機械の損料で、国土交通省は次のように説明しています。

「建設機械損料とは、建設業者が所有する建設機械等の償却費、維持修理費、管理費等を指し、これらのライフサイクルコストを1時間当たり又は1日当たりの金額で表示した経費」です。3つの費用の意味は、請負工事機械経費積算要領で定義されています。

用語 請負工事機械経費積算要領の定義
償却費機械の使用又は経年による価値の減価額
維持修理費機械の効用を持続するために必要な整備及び修理の費用で、運転経費以外のもの
管理費機械の保有に伴い必要となる公租公課、保険料、格納保管等の経費

見積書の「工具損料」は、この考え方を電動工具や手工具に当てはめた項目です。購入時に一度払う代金ではなく、使う期間に分けて回収する費用として扱います。

どんな場面で発生するもの?

工具や機械を使う工事であれば損耗の費用は発生し、基準ごとに計上する場所が決まっています。国土交通省の基準での扱いを並べると次のとおりです。

場面 損耗の費用の扱い 根拠
公共建築工事の専門工事「小器材の損耗費」は専門工事業者等の諸経費(現場管理費)に含む。諸経費の率は労務費に42~52%、材料費・消耗材料費等に9~13%公共建築工事標準単価積算基準(令和8年改定)表2・表3
公共土木工事雑材料、小器材の費用等は「諸雑費」として率計上し、所定の諸雑費率を上限とする土木工事工事費積算要領及び基準の運用
建設機械を使う工事建設機械等損料算定表の、運転1時間当たり損料と供用1日当たり損料で計上請負工事機械経費積算要領
仮設材(足場など)賃料、または基礎価格×損料率で算定。修理費は仮設資材賃料の5%を標準公共建築工事標準単価積算基準
民間工事決まった基準はなく、独立項目・諸経費・労務単価のいずれかに含める―

見積書に「工具損料」の行がなくても、諸経費や単価の中に含まれている場合があります。行がないことだけで「かかっていない」とは判断できません。

何%が一般的?相場の考え方と判断基準

何%が一般的?相場の考え方と判断基準

「工具損料は何%」という全国共通の公的な率はありません。公共建築工事標準単価積算基準と、土木工事工事費積算要領及び基準の運用を確認しましたが、「工具損料◯%」という項目は載っていません。

公共工事で率が決まっているのは、歩掛(作業単位あたりの人手・材料の標準量)ごとの諸雑費率や、専門工事業者等の諸経費率です。これらは小器材以外の費用も含むため、工具損料だけの相場としては使えません。

民間の見積で率を決めるときは、次の順で判断します。

● 発注者が指定する積算基準や見積書式があれば、その区分に従う

● 指定がなければ、自社の年間工具費÷年間労務費で率を出す

● 機械を賃料や損料で別に計上している場合は、その分を工具費から外す

工具に近い公的な例では、公共建築工事標準単価積算基準の仮囲いの歩掛(表A1-1-1)が、ハンマ・ラチェットレンチ・脚立・クランプ等の費用を「雑費」とし、労務費の8%で計上しています。これは仮囲いという1つの工種の数値で、工具全般の相場ではありません。

工具損料の率はどう決まる?現場ごとに違うポイント

率は「年間の工具費(償却費+修理費+管理費)÷年間の労務費」で決まり、損耗が激しい現場ほど高くなります。現場条件で損料を変える考え方は、公的な基準にもあります。

請負工事機械経費積算要領は、次の場合に損料を補正できると定めています。

条件 対象 補正の上限(この割合を掛けた額まで)
岩石作業に使用するブルドーザ(リッパ装置付を除く)、ショベル系掘削機、ダンプトラック(建設専用を除く)などの運転1時間当たり損料100分の125
豪雪地域で使用する機械(作業船を除く)の供用1日当たり損料100分の110(北海道地域は100分の115)
寿命や維持修理費が通常と著しく異なる現場条件運転1時間当たり損料100分の80以上100分の120以下(供用日単位の機械は100分の90以上100分の110以下)

工具の率を現場ごとに変えるときも、その現場の修理費や買い替えの記録を根拠にしてください。

運転時損料とは?工具損料との違いを分かりやすく整理

運転時損料は、機械を運転した時間に応じて計上する「運転1時間当たり損料」のことです。機械損料は、これに現場に置いた日数分の「供用1日当たり損料」を足して算定します。

運転1時間当たり損料=基礎価格×(1/2×償却費率+維持修理費率)÷耐用年数÷年間標準運転時間

供用1日当たり損料=基礎価格×(1/2×償却費率÷耐用年数+年間管理費率)÷年間標準供用日数

償却費率は0.9。その他の数値は建設機械等損料算定表による

項目 運転1時間当たり損料 供用1日当たり損料 工具損料(民間の見積)
数える単位運転時間現場に供用した日数(搬入・搬出の日数を含む)労務費などに対する率、または一式
中身償却費の半分+維持修理費償却費の半分+管理費工具の償却・修理・管理の費用
根拠請負工事機械経費積算要領請負工事機械経費積算要領自社の実績

燃料費・油脂費・電力料・運転労務費・消耗部品費は「運転経費」として別に積算する決まりです。損料に燃料代を含めて二重に計上しないよう注意してください。

工器具損料とは?似ているようで異なる定義と範囲

工器具損料は、工具に加えて発電機や送風機などの器具まで含めた損料です。国土交通省の機械設備積算基準(案)の対比表(平成21年度版)の塗装の章(諸雑費)には、次の記載があります。

● 諸雑費=橋梁塗装工労務費×諸雑費率

● 現場塗装の諸雑費には、工器具(エアレススプレー機、発動発電機、はけ等、及び密閉部内作業の送風機、照明設備等)の損料を含む

この例では、工器具の損料を1点ずつ積み上げず、労務費に率を掛けた諸雑費の中に含めています。

一方、足場や鋼製脚立は、公共建築工事標準単価積算基準では仮設として歩掛に入っています。仮設で計上したものを、工器具損料にもう一度入れないようにしてください。

工具損料の相場を見積や計算に活かす方法と実務で使える知識

工具損料の相場を見積や計算に活かす方法と実務で使える知識

編集長
編集長

見積で問われるのは率の大小よりも、どの費用をどこに入れたかの説明です。計上方法を1つに決め、計算の根拠を残しておいてください。

ここからは、見積書への載せ方、率の計算手順、見直しの考え方を順に確認します。

見積はどう作る?確認すべき項目と注意点

工具損料の載せ方は「独立項目」「諸経費に含める」「労務単価に含める」の3通りで、1つの見積では1か所にだけ入れます。

計上方法 向いている場合 注意点
独立項目(労務費×率、または一式)率の根拠を示したい・専用工具を多く使う工事率の計算根拠を聞かれたら示せるようにする
諸経費に含める公共建築の考え方(小器材の損耗費は現場管理費)に合わせたい場合諸経費の内訳として説明できるようにする
労務単価に含める小規模な工事で項目を増やしたくない場合単価が高く見えるため、含むものを備考に書く

計算方法は?初心者でも使える具体的ステップ

計算は「年間の工具費を出す→年間の労務費で割る→工事の労務費に掛ける」の3ステップです。以下の金額は計算例として置いた仮の数字です。

① 年間の工具費を出す

工具ごとに「購入価格÷使う年数+年間の修理費」を出して合計します。50,000円の電動工具を5年使い、修理に年2,000円かかるなら、1台あたり年12,000円です。

② 年間の労務費で割る

工具一式の合計が年60万円、年間の労務費が2,400万円なら、60万円÷2,400万円=2.5%になります。

③ 工事の労務費に掛ける

労務費が80万円の工事なら、80万円×2.5%=20,000円が工具損料です。件数で割る方法もありますが、工事の規模がそろっていないと小さな工事の負担が重くなります。

建設機械は、この方法ではなく建設機械等損料算定表の数値で積算します。

工具損料の率を調整する理由とトラブルを防ぐコツ

工具損料の率を調整する理由とトラブルを防ぐコツ

工具や機械の価格が上がれば損料も上がるため、率は定期的に計算し直します。国の機械損料も改定されており、令和8年度版の建設機械等損料算定表は令和6年度版と比べて次のように変わりました。

機械分類 基礎価格 運転1時間当たり換算値損料 供用1日当たり換算値損料
全平均1.15倍1.16倍1.14倍
運搬機械1.18倍1.15倍1.13倍
コンクリート機械1.29倍1.28倍1.27倍
電気機器1.06倍1.19倍1.04倍

率を変えるときに行き違いを防ぐポイントは3つです。

● 決算後など時期を決めて、年1回は工具費と労務費から率を計算し直す

● 率を変えた理由(工具価格の改定・修理費の増加など)を数字で残す

● 見積書の備考に「工具損料は労務費の◯%(自社実績)」と算出方法を書く

トラックの損料とは?運搬費との違いを理解する

トラックの損料は車両の償却費・維持修理費・管理費で、運搬費は物を運ぶためにかかる費用です。請負工事機械経費積算要領は第9で、機械の輸送費を次のように定めています。

項目 中身 数える単位
トラックの損料車両の償却費・維持修理費・管理費運転時間・供用日数
運転経費燃料費、油脂費、運転労務費など運転時間
輸送費(運搬費)最も経済的な通常の経路・方法による運賃と積卸しの費用。自走する機械は、その機械の機械損料と運転経費搬入・搬出ごと

自社のトラックで運ぶ場合の運搬費は、損料と運転経費を合わせたものです。燃料代と人件費だけを運搬費にすると、車両の償却や車検・修理の費用が見積から抜けます。

まとめ:工具損料の相場を正しく理解して見積精度を高める

工具損料の相場に公的な一律の率はなく、自社の工具費と労務費から計算した率が根拠になります。

● 機械損料は償却費・維持修理費・管理費を1時間・1日あたりで表した経費

● 公共工事では、小器材の費用は諸雑費や諸経費の中で扱われる

● 自社の率は、年間の工具費÷年間の労務費で出す

● 賃料・機械損料・仮設で計上したものは、工具損料に重ねない

まず直近1年の工具の購入費と修理費を集計し、労務費で割って自社の率を出してみてください。