電気工事士から転職するなら、資格と現場経験がそのまま通じる近い職種から検討するのが基本です。国の統計と試験実施機関の公式情報をもとに、選択肢と判断の軸を整理しました。

電気工事士として働いていますが、体力的にきつくなってきました。転職するなら何を基準に選べばいいですか?

先に「何を変えたいのか」を決めることです。体力負担・収入・休日のどれを優先するかで、設備管理・施工管理・保全など向く行き先が変わります。
📌 この記事でわかること
● 建設業の就業者数と年齢構成から見た、電気工事の仕事の今後
● 第二種・第一種それぞれで従事できる工事の範囲
● 施工管理技士の受検資格で、電気工事士の免状がどう扱われるか
● 電験三種の科目と、直近の受験者数・合格者数
● 求人票の固定残業代で必ず確認する3つの項目
電気工事士からの転職で迷う人へ:基礎知識と判断ポイント


まず業界の人手の状況と、資格で何ができるかを数字と制度で確認します。辞めたい理由が仕事内容なのか職場なのかを分けて考えると、選ぶ道がはっきりします。
この章の数字は、国土交通省・厚生労働省の資料と、電気技術者試験センターの公式サイトにもとづきます。
電気工事士は将来的に減少する?需要と働き方の変化
働く人の数は減っていますが、電気工事の作業は有資格者にしかできないため、資格の価値がなくなるわけではありません。電気工事士法第3条は、第一種・第二種電気工事士でなければ一般用電気工作物等の電気工事の作業に従事してはならないと定めています。
| 項目 | 数字(国土交通省「建設業を巡る現状と課題」) |
|---|---|
| 建設業就業者数 | 685万人(平成9年平均)→ 479万人(令和4年平均) |
| ピーク時からの減少 | 約30%減 |
| 55歳以上の割合 | 35.9% |
| 29歳以下の割合 | 11.7% |
上の表は建設業全体の数字で、電気工事士だけを取り出したものではありません。それでも、若い担い手が少なく高齢化が進んでいる状況は読み取れます。
仕事の量と働き方は別問題
人が減れば、1人あたりの負担は増えやすくなります。一方で、建設業にも令和6(2024)年4月から時間外労働の上限規制が適用され、原則は月45時間・年360時間以内です。
災害時の復旧・復興の事業には一部の特例があります。転職を考えるときは、今の職場がこの上限を守れているかも判断材料にしてください。
離職率は?辞めたくなる理由を整理
電気工事士だけの離職率を示す公的な統計は見当たりません。近い数字を知りたいときは、厚生労働省の雇用動向調査にある産業別の表で「建設業」の入職率・離職率を確認できます。
同調査の令和6年の結果では、一般労働者の離職率が高い産業として「サービス業(他に分類されないもの)」19.0%、「宿泊業,飲食サービス業」18.1%が挙げられています。建設業は、離職率が特に高い産業としては名前が挙がっていません。
辞めたい理由は、次の3つに分けると整理しやすくなります。
| 理由の種類 | 例 | まず検討すること |
|---|---|---|
| 仕事内容 | 高所や狭い場所での作業がつらい | 設備管理・内勤など職種を変える |
| 職場環境 | 残業・休日・移動距離・人間関係 | 同じ職種のまま会社を変える |
| 将来への不安 | 体力が続くか、収入が伸びるか | 資格を足して管理側へ進む |
転職やめたほうがいい人の特徴は?今の職場で伸びるケース

経験が浅く「自分にできること」を説明できない段階では、急いで動かないほうが有利です。面接で評価されるのは、担当した現場の種類と作業を具体的に話せるかどうかだからです。
● 入社1年未満で、任された作業を具体的に説明しにくい
● 何が一番つらいのかを言葉にできていない
● 今の職場に資格手当や、住宅・店舗・工場など現場の幅がある
● 次にやりたい仕事と、譲れない条件が決まっていない
「転職すべきか」を判断する3つの問い
| 問い | 今は動かないサイン | 転職を検討するサイン |
|---|---|---|
| 辞めたい理由は何か | 繁忙期など一時的なきつさ | 安全が守られない・長時間労働が続く・心身に不調がある |
| 今の職場で伸びる余地は | 資格手当・昇給・現場の幅がある | 評価の基準がなく、条件が変わらない |
| 次の行き先を言えるか | 職種も条件も決まっていない | 職種と条件を具体的に挙げられる |
⚠️ 注意
安全管理が守られていない、心身に不調が出ているという場合は、経験年数に関係なく早めに環境を変えてください。
電気工事士2種を活かせる仕事は?未経験扱いになりにくい職種
第二種で従事できるのは、低圧で受電する一般家庭や商店などの屋内配線設備、小規模な太陽電池発電設備などの工事です。この範囲の知識がそのまま通じる職種を選ぶと、経験を説明しやすくなります。
| 職種 | 活かせる経験 | こんな人に |
|---|---|---|
| 設備管理(ビル・商業施設) | 点検、不具合の一次対応、電気の基礎 | 体力負担を減らしたい |
| 工場・倉庫の保全 | 配線の理解、機器交換、原因の切り分け | 故障の原因を考えるのが好き |
| 電材・設備機器のルート営業 | 部材の知識、施工手順の理解 | 現場を離れても電気に関わりたい |
| 積算・施工図の補助 | 図面の読み取り、材料拾い | 内勤の比率を上げたい |
資格を足して管理側へ進む道もあります。2級電気工事施工管理技術検定の第二次検定は、旧受検資格の場合、第二種電気工事士の免状があれば通算1年以上の実務経験で受検できます。
事務職やIT職など電気と離れた職種では、資格そのものは評価されにくくなります。その場合は、段取りや安全確認の経験を言い換えて伝える準備をしておきましょう。
第一種電気工事士が転職で有利になる場面とは
第一種が効くのは、高圧で受電するビルや工場の電気設備を扱う職場です。第一種は、第二種の範囲に加えて、最大電力500kW未満の需要設備の電気工事に従事できます。
| 比べる点 | 第二種 | 第一種 |
|---|---|---|
| 従事できる工事 | 一般家庭・商店などの屋内配線設備、小規模な太陽電池発電設備など | 左に加えて、高圧で受電する小規模なビル・工場などの電気設備 |
| 2級電気工事施工管理 第二次検定(旧受検資格) | 通算1年以上の実務経験が必要 | 実務経験は問われない |
旧受検資格で申請できるのは令和10年度までで、令和11年度以後は新受検資格だけになります。施工管理へ進むつもりなら、受検する年度の「受検の手引」で条件を確認してください。
資格だけで評価が決まるわけではありません。図面が読める、工程の流れが分かるといった実務の中身と合わせて伝えると、強みになります。
電気工事士からの転職のおすすめ先:活かせる仕事と具体的な選択肢


ここからは行き先ごとの中身です。施工管理と電気主任技術者は、受検資格や試験の仕組みが公式に決まっているので、その条件から逆算して計画を立てます。
どの職種が合うかは、体力負担・収入・休日のどれを優先するかで変わります。
電気工事士を活かせる仕事は?経験が評価されやすい分野
評価されやすいのは、電気設備の点検・保守・管理に関わる5つの分野です。現場で身につけた停電の手順や検電、保護具の使い方は、どの分野でも共通して求められます。
| 分野 | 主な仕事 | 働き方の特徴 |
|---|---|---|
| 設備管理 | 点検・巡回・軽い修繕 | シフト制や当直がある職場もある |
| 保全・メンテナンス | 故障対応・部品交換・改善 | 突発対応がある |
| 電材・機器の営業 | 見積・納品調整・提案 | 対人業務が増える |
| 施工管理 | 工程・品質・安全・原価の管理 | 責任と調整が増える |
| 内勤支援 | 積算・図面修正・書類作成 | 座り仕事が中心になる |
賃金や求人倍率を職業ごとに調べたいときは、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)で検索できます。求人を見る前に、候補の職種の数字を比べておくと判断しやすくなります。
電気工事士から施工管理へ転職はあり?仕事内容と向き不向き
電気工事士の免状は施工管理技士の受検資格でも考慮されるため、施工管理への転職は現実的な選択肢です。ただし仕事の中心は、手を動かす作業から工程・品質・安全・原価の4つの管理に移ります。
| 2級電気工事施工管理技術検定 | 内容(建設業振興基金の案内) |
|---|---|
| 第一次検定の受検資格 | 試験実施年度に満17歳以上 |
| 第二次検定(旧受検資格) | 第一種電気工事士は実務経験不問、第二種電気工事士は通算1年以上 |
| 受検手数料 | 第一次・第二次とも各7,900円(非課税) |
施工管理に向いている人・向いていない人の見分け方
| 見る点 | 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|---|
| 人との調整 | 話して段取りを決めるのが苦にならない | 指示を出すのが苦手 |
| 仕事の進め方 | 計画を立てて先回りできる | 一人で黙々と作業したい |
| 書類 | 写真管理や報告書を続けられる | 細かい書類が強い負担になる |
入社前に、書類業務の割合・担当する現場の数・残業の実態を質問しておくと、入ってからのずれを減らせます。
電気主任技術者が転職を目指すルートと現実的な準備

電気主任技術者(電験)は、数年かけて目指す中長期の選択肢です。高圧や特別高圧で受電するビル・工場などでは、設置者が原則として事業場ごとに電気主任技術者を選任するよう電気事業法で義務づけられています。
| 資格 | 扱える範囲 |
|---|---|
| 第一種 | すべての事業用電気工作物 |
| 第二種 | 電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物 |
| 第三種 | 電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く) |
第三種は一次試験のみで、理論・電力・機械・法規の4科目です。科目別合格制なので、有効期限の3年間を使って1科目ずつ積み上げる方法も取れます。
| 年度・期 | 受験者 | 合格者 |
|---|---|---|
| 令和6年度 上期 | 25,416人 | 4,064人 |
| 令和6年度 下期 | 24,547人 | 4,117人 |
| 令和7年度 上期 | 24,766人 | 3,201人 |
| 令和7年度 下期 | 24,176人 | 3,164人 |
合格者を受験者で割ると、令和7年度は上期が約12.9%、下期が約13.1%です。
電気工事士から電験を目指す現実的な準備の順番
● ①受電・変圧・遮断器など、高圧設備の仕組みを学ぶ
● ②設備管理や工場保全など、点検と運用に近い職場で経験を積む
● ③科目別合格制を使い、4科目を複数年に分けて受ける
● ④資格取得後に働きたい施設を決め、求人の要件を確認する
電気工事士の就職先のおすすめはどこ?業界別の選び方
おすすめは、体力負担・収入・安定の3つのうち何を優先するかで変わります。同じ電気の仕事でも、現場の種類で働き方が違うためです。
| 就職先 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 住宅・店舗の電気工事 | 手を動かして覚えたい | 移動が多く、繁忙期は残業が増えやすい |
| ビル・商業施設の設備工事 | 図面とルールに沿って進めたい | 夜間工事が入ることがある |
| 工場・倉庫の保全 | 原因を考えるのが好き | 突発対応や交替勤務の有無を確認する |
| ビルメン(設備管理) | 体力負担を減らしたい | 当直の有無と昇給の仕組みを確認する |
| サブコン・設備会社 | 収入と役職を伸ばしたい | 責任と調整が増える |
| 電材・機器メーカーや商社 | 現場から離れたい | 数字の目標がある場合がある |
迷うときは、一番変えたいこと・譲れない条件・今の強みの3点を書き出してから求人を見ると、判断がぶれにくくなります。
電気工事士のホワイト企業の見つけ方:求人の見分けポイント
見分けるコツは、求人票に数字とルールが書かれているかを確かめることです。残業・休日・手当があいまいな求人は、面接で具体的に質問します。
● 残業:月平均の時間と、繁忙期の時間が書かれているか
● 休日:年間休日の日数と、毎週2日休みかどうか
● 現場:エリア・出張の頻度・夜間工事の有無
● 手当:資格手当の金額と支給の条件
「みなし残業」「固定残業代」の求人に注意すべきポイント
厚生労働省は、固定残業代制を採る企業に対し、募集要項や求人票に次の3つをすべて明示するよう求めています。
| 明示が必要な項目 | 求人票で見るところ |
|---|---|
| ①固定残業代を除いた基本給の額 | 基本給と手当が分けて書かれているか |
| ②固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法 | 何時間分で、いくらなのか |
| ③固定残業時間を超える時間外労働などに割増賃金を追加で支払う旨 | 超過分を別に支払うと書かれているか |
時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。固定残業の時間数がこの水準に近い求人は、実際の残業時間を面接で確認してください。
まとめ:電気工事士からの転職で後悔しないための結論と次の一手
電気工事士からの転職は、資格の範囲と受検資格を確認したうえで、近い職種から選ぶと失敗しにくくなります。要点は次の4つです。
● 辞めたい理由を、仕事内容・職場環境・将来への不安に分ける
● 体力負担を減らすなら設備管理や保全、収入を伸ばすなら施工管理を検討する
● 施工管理技士と電験は、公式の受検資格と試験の仕組みから計画を立てる
● 求人票は固定残業代の3項目と、残業・休日の数字を確認する
まずは変えたいことと譲れない条件を3つずつ書き出し、候補の職種の求人票を2~3件見比べるところから始めてください。
📚 参考文献・出典
・厚生労働省 – 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制
・厚生労働省 – 令和6年雇用動向調査結果の概況「産業別の入職と離職」(PDF)
・電気技術者試験センター – 第三種電気主任技術者試験の試験結果と推移
・建設業振興基金 – 2級 電気工事施工管理技術検定のご案内
・厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク – 固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします(PDF)
※ 統計の数値・試験制度は各機関の公表資料にもとづきます。受検資格や試験日程は年度によって変わるため、申し込み前に公式サイトで最新の情報を確認してください。

